バレエ・ダンサーの障害

 バレエ・ダンサーの障害には一般のスポーツ競技に見られる障害と、舞踊特有の動作に伴う障害の二つに分けて考える必要があります。
 足関節捻挫や膝の半月版損傷などについては他のスポーツ競技でも多く診られるため、受傷原因や治療法についてスポーツ医学の分野で長年研究されてきました。これに対しポワントで立つ、股関節を大きく開いて足を高く掲げるなどといった動作はバレエに特有のものであり、一般のスポーツ医学ではほとんど検討されたことがありません。
 バレエで特徴的なことは上記以外に、基本ポジションにおける股関節外旋位、男性ダンサーが女性ダンサーを両腕で持ち上げるエレベーションがあり、また女性ダンサーは幼少期から訓練を受けている場合が多いことも特徴のひとつです。これに対し男性ダンサーやモダン・ダンスのダンサーは開始年齢が比較的高い傾向がありますが、最近は成人以降にクラシック・バレエを学び始める女性が増えており、ダンサーの障害に新たな要因をもたらしています。
 これまで報告されている統計では、バレエ・ダンサーの障害は下の表のように下肢が80%以上を占めており、上肢が多い音楽家とは対照的な結果となっています。

バレエ・ダンサーの障害部位
足関節  22.3%
足部 20.1%
17.3%
股関節 8.6%
下腿 7.8%
大腿 4.3%
その他 11.1%

(Quirk R: Ballet injuries: the Australian experience. Clin in Sports Med, 2(1983): 507-514による)